アルミ防食を克服し、自動車の軽量化・グリーン化に貢献

ワイヤハーネスのアルミニウム化(軽量化)を阻む、異種金属間腐食

自動車用ワイヤハーネスは、自動車内の隅々に張り巡らされた電線を主な構成品とし、自動車内の電力供給と信号伝達の役割を担う、いわば人間の神経・血管に相当する製品だ。

そのワイヤハーネスは、近年の自動車の軽量化と銅資源の枯渇・価格高騰を背景として、電線のアルミニウム化に注目が集まっている。アルミニウム化によって、大型SUV車の場合、ワイヤハーネスの総重量が3~4割程度軽量化されるとの試算もあり、自動車の燃費向上への貢献が期待されている。

しかしながら、アルミワイヤハーネスはアルミ電線と端子(銅合金製)の間で良好な電気的接続を得るため、端子部分への異種金属間の腐食対策が必要不可欠だ。これまで、製造時に別工程を必要とし製造コストが大きくかさむことや、専用の部品が必要なため汎用性に欠けることなどにより、その普及が妨げられていた。

新技術で異種金属間腐食の問題を解決

古河電気工業は、この問題を新技術で克服した。新たに開発した防食端子「α端子シリーズ」は、一般端子と同様に高速プレス機にて成型した端子の圧着部を、古河電工保有の光ファイバレーザの溶接技術を用いて密閉した管構造(図2)にした。そして、ワイヤハーネス製造工程において、アルミ電線を圧着すると同時に電線端部被覆をかしめることで(図3)、気密性の高い優れた防食構造を実現した。

「α端子シリーズ」は、すでに2015年8月発売の新型ランドクルーザー200系に採用されており、今後もカーメーカー各社に幅広く提案することで、アルミワイヤハーネスの普及に貢献していく。

新防食端子「α端子シリーズ」の開発について、古河電工グループの自動車事業において中核を担う古河ASの執行役員技術本部長、山井智之は次のように語った。
「『α端子シリーズ』は古河電工グループの総力を結集して開発した新製品です。端子に使用される銅は古河電工が創業から手掛け特性を知り尽くしている素材であり、端子を高精度で成型する工程では古河ASが長年培ったプレス技術が活かされています。また、管構造にするための溶接工程では、古河電工保有の光ファイバレーザを用いて優れた気密性と生産性を実現しました。古河電工グループは自動車市場に対してグループ全体でソリューションを提供する『自動車OneF』活動を展開しており、今後も自動車のグリーン化に貢献していきます」