母材ダメージレスとは
塗膜や錆を落とすとき、その下にある母材まで一緒に削ってしまえば、表面は確かにきれいになります。しかしそれは、部材を薄くしながら汚れを取っているのと同じです。
母材ダメージレスとは、落としたいものだけを除去し、母材はそのまま残すという考え方です。除去できたかどうかだけでなく、母材が元の状態を保っているかまでを見ます。
母材へのダメージは3つの形で現れる
減肉
母材そのものが削れて薄くなること。部材の強度に直結します。
溶融
熱で母材の表面が溶けること。冷えたあとの形状と性質が元とは変わります。
金属組織の変化
見た目には分からなくても、熱によって内部の組織が変わること。
次の2枚は、同じ倍率で撮影した断面です。左は母材にダメージがない状態で、表面が平らなまま残っています。右は減肉と溶融が起きた状態で、表面が波打っているのが分かります。
連続波(CW)と独自の光学技術で解いている
レーザの当て方には、瞬間的に強い光を短く繰り返すパルス方式と、光を連続して出す連続波(CW)方式があります。インフラレーザ®は連続波を使い、そのうえで独自の光学技術で当て方そのものを工夫しています。
レーザを1点に絞って照射すると、その一点のパワー密度が高くなります。汚れは落ちますが、同時に母材へ熱が集中し、ダメージが入りやすくなります。一点に熱を集中させず、面としてとらえる。これが考え方の出発点です。
インフラレーザ®は、ライン状のビームをヘッド内で回転させ、ドーナッツ形状のビームを形成しています。エネルギーを1点に集中させず面として分散させることで、除去に必要な出力を保ちながら、母材へのダメージを入りにくくしています。
「傷つけていない」をどう確かめるか
母材を傷つけていないことは、見た目だけでは判断できません。インフラレーザ®では、次の手法で施工後の状態を確認しています。
断面観察
施工した部分を切り出して断面を観察し、減肉や溶融が起きていないかを見ます。
ビッカース硬さ試験
硬さの変化を測ることで、熱による金属組織の変化がないかを確かめます。
EPMA残留元素マッピング
電子線マイクロアナライザで、施工後に何が残っているかを元素単位で分布として見ます。
いずれも古河電工の社内機関で実施しています。対象物をお持ち込みいただければ、施工前後の状態を評価することもできます。
母材を傷つけないことが、検査の精度に直結した例
鉄道台車の探傷試験では、塗膜を除去したあとの母材表面に傷があると、その傷が検査の判定に影響します。JR東海との共同開発では、探傷試験の前工程としてインフラレーザ®を採用いただきました。母材に傷を作らずに塗膜だけを落とせることが、そのまま検査の精度につながっています。