光の新時代を切り拓く。AI・データセンタ市場にグローバルで挑むLightera

光ファイバ・ケーブル事業をグローバル視点で展開する「Lightera」(ライテラ)が、2025年4月1日に始動してから1年が経過しました。この間、AIの進化、データセンタの需要拡大など、光通信を取り巻く市場環境は激変。そのなかで着実に成果をあげ、プレゼンスを高めてきました。今回は、Lightera CEOであるHolly Hulseさんにインタビュー。これまでの歩みとビジョンについてお話いただきました。

  • ホリー ハルスHolly Hulse
    Lightera CEO、古河電気工業 執行役員

    2022年7月にOFS Fitel President、2025年4月に古河電気工業 執行役員、Lightera President & COOに就任。2026年4月にLightera CEO兼古河電気工業 執行役員に就任し現在に至る。

「よりグローバルな企業へ」──Lightera誕生の原点

——まずは自己紹介をお願いします。Hollyさんは、どのようなバックグラウンドをお持ちなのでしょうか。

Holly: 私のバックグラウンドの根幹にあるのは「エンジニアリング(工学)」です。もともとは宇宙工学という、非常に緻密な設計と高度な技術が要求される分野を専門に学んできました。しかし、技術を極めるだけでなく、その技術がどのように社会や経済を動かすのか、ビジネスという側面からも深く理解したいと考え、大学院でMBAを取得しました。

これまでのキャリアは、まさに現場から経営までを網羅する道のりでした。製造プロセスの工学からキャリアをスタートさせ、アプリケーションエンジニアリング、マーケティング、営業、そして全体を統括するマネジメント職まで、多岐にわたる領域に深く関わってきました。

この工学的なバックグラウンドがあることで、私はあらゆる問題に対して非常に「システマチック(体系的)」にアプローチするマインドが養われていると自負しています。ビジネスの現場では、日々さまざまな課題が発生します。それが対人関係の複雑な摩擦であれ、営業上の戦略的ハードルであれ、あるいは純粋に技術的な壁であれ、私は常にエンジニアとして学んだ「問題解決へのアプローチ」をそのまま適用しています。事象を分解し、根本的な原因を特定し、論理的なプロセスを経て解決策を導き出す。この一貫した姿勢こそが、私の最大の強みです。

また、私たちが現在扱っているのは、極めて高い技術力を要する光ファイバや関連製品です。経営者として、自ら完璧にファイバのデザインを引く必要はありませんが、業界で今どのような技術が求められ、どのようなトレンドが主流となりつつあるのか、そしてそれらが具体的にどのような製造背景から生まれているのかを深く理解しておくことは不可欠です。テクノロジーの本質を把握した上で意思決定を下すことが、会社の成長に直結すると確信しています。

Lightera CEO、古河電気工業 執行役員 Holly Hulse

——技術的なバックグラウンドを持つHollyさんから見て、当初、古河電工という日本の老舗企業にはどのようなイメージをお持ちでしたか。

Holly: 私は2025年に古河電気工業の執行役員に任命され、2026年4月1日付でLighteraのCEOに就任しました。現在はグローバルなオペレーションを統括し、戦略的な方向性を定めるリーダーシップを担っていますが、この役職に就くまでのプロセスは非常にエキサイティングなものでした。

選考を受けていた当時、私はアメリカやヨーロッパを拠点とする古河電工グループのOFSという企業に在籍していました。その後、2025年に各拠点が統合されて現在のLighteraが誕生することになるのですが、統合前の面接での対話は今でも鮮明に覚えています。その際、古河電工側から示されたのは「よりグローバルな企業へと進化していく」という非常に力強く、明確なビジョンでした。

古河電工という長い歴史を持つ日本企業が、自らを変革し、世界市場で真のリーダーを目指そうとする姿勢に、私は大きな期待と興奮を覚えました。まさに「新しい会社」へと生まれ変わる転換期において、その新しい時代の舵取りを共に担える。そのことに、経営者として、また一人の人間として、これ以上ない喜びと使命感を感じていました。

——改めて、Hollyさんが率いる「Lightera」という会社について詳しく教えてください。

Holly: Lighteraは、「ファイバ」「ケーブル」「コネクティビティ」という3つの主要領域において、包括的なソリューションを提供する企業です。主なターゲット市場としては、長年実績を積んできた伝統的な通信分野に加え、近年では爆発的な成長を遂げているデータセンタやAI向けのサービスに注力しています。さらに、宇宙航空や医療といった、極めて特殊でニッチな、しかし高い信頼性が求められる領域においても最適なソリューションを展開しています。

Lighteraの設立にあたっては、組織の統合という大きな壁がありました。以前はOFS、Furukawa Electric LatAm(FEL)、古河電工のファイバ・ケーブル事業部門といった複数の独立した事業ユニットが存在しており、それぞれが市場で高い評価を得ていました。私たちは、これまでお客様に親しまれてきた個別の製品ブランドを変えるつもりはありません。それらは長期にわたって市場に浸透している「大切なレガシー」であり、維持すべき価値だからです。

Lightera設立に伴う組織体制の変化

しかし、コーポレートブランドについては話が別でした。たとえ組織が一枚岩になっても、社名がバラバラでは、市場から一つの会社として認識されにくいという懸念がありました。そこで、真のグローバル企業としてアイデンティティを統一するために、新しい社名を定めることにしたのです。

新しい名前を決める際、私は「トップダウンで一方的に押し付ける」という手法は取りたくないと考えました。世界中の社員が自分たちの会社だと誇りを持てる名前にするため、社員を巻き込み社内公募を実施したのです。すると、世界中の拠点から400以上もの独創的なアイデアが集まりました。この「プロセス自体」が、組織を統合する上で非常に重要なステップでした。

私たちは集まった400のアイデアを精査し、いくつかの最終候補に絞り込みました。その中には、古河電工の伝統を感じさせるものもあれば、全く新しい響きを持つものもありました。これらについて、世界数カ国でフォーカスグループ・インタビューを行い、どのような印象を与えるかを徹底的に調査しました。

興味深いことに、調査の結果、最終候補の二つがほぼ同数の支持を得ることになり、投票だけでは決着がつきませんでした。そこでLightera経営陣で協議し、最終的に古河電工の森平社長に相談を持ちかけました。しかし森平社長は、「私が選ぶべきではない。Hollyたちがこれから会社を率いていくのだから、自分たちで決めなさい」という、大変心強い言葉をかけてくださいました。

ただ、社長の個人的な好みをこっそり伺うと、森平社長は「Lightera」という響きを大変気に入っておられました。「Light(光)」と「Era(時代)」を組み合わせたこの名前には、私たちが提供する光のソリューションで、新たな時代を切り拓いていくという、瑞々しい未来への決意が込められています。Lighteraのメンバーも同意見であったため、この社長の言葉が最後の一押しとなり、スムーズに決定しました。

ロゴのデザインにもこだわりを詰め込みました。競合他社の多くが青や赤を採用する中で、私たちはあえて印象的で高貴な「紫色」を選び、全く新しいルックを追求しました。この選択は展示会などでも非常に好評で、私たちの革新性や、他社とは一線を画す存在感を象徴するものとして、市場から高く評価されています。

Lighteraロゴ

異なる文化の融合が、Lighteraの強さになる

——2025年4月の発足から1年が経過しました。この1年は古河電工にとって挑戦の年であったと同時に、世界情勢も激動の時期でした。この1年の歩みを振り返っていただけますか。

Holly: この1年を振り返って痛感しているのは、激動の市場で勝ち残るためには「柔軟性」「アジャイル」そして「スピード」が何よりも不可欠であるということです。

現在、私たちが直面している最大の挑戦は、データセンタやAIの爆発的な成長です。これに伴う需要は、私たちの供給能力を遥かに上回る勢いで伸び続けています。率直に申し上げて、現在の2倍の生産能力があったとしても、市場の要求をすべて満たすには足りないほどです。

このような状況において、2025年以降、特に重要になると考えているのが「お客様の期待値の適切なコントロール」です。私たちは、「約束は控えめにし、成果で期待を上回る(Under-promise and Over-deliver)」という哲学を大切にしています。目先の利益を優先して安易に過大な約束をし、結果として供給が滞れば、これまで100年をかけて築いてきた信頼を瞬時に失いかねません。

そのため、お客様とは常に誠実で、時には厳しい対話も重ねています。「今すぐ欲しい」という切実なご要望に対しても、不可能なことを可能とは言わず、「即納は難しいが、3カ月後であればこの量を確実に届けられる」といった、具体的かつ現実的な代替案を提案するようにしています。この透明性の高いコミュニケーションこそが、長期的なパートナーシップの礎になると信じています。

また、ビジネスチャンスが拡大する一方で、部材の不足やバリューチェーン全体でのコスト増加という逆風も存在します。市場の動きを常に注視し、現場の状況を古河電工本社へ迅速に共有し、グループ一丸となってお客様へサービスを提供し続ける体制の維持に心血を注いできました。

——この1年の間に構築してきた組織体制について詳しく教えてください。

Holly:先ほども触れたとおり、Lightera設立以前、中南米、北米・欧州、そして日本の各部門は、それぞれ個別の事業体として成功を収めていました。各拠点が独自の技術チームを持ち、特定の製品分野で専門性を誇っていました。

しかし、真のグローバル競争に打ち勝ち、お客様に対して「世界最高」の価値を提供するためには、これらの個別の力を一つに統合することが不可欠だと判断しました。バラバラに動くのではなく、多様なソリューションを一元的に提供できる「One Lightera」へと進化すること。これが私たちのビジョンです。

もちろん、この変革には時間がかかります。これまでの「地域ごとに慣れ親しんできたやり方」を刷新し、アイデアをオープンに共有する文化をゼロから醸成しなければならないからです。従来は自部門だけの知識として抱え込んでいた情報を、世界中の同僚と共有し合うマインドセットへの転換が求められています。

このビジョンを形にするため、私たちは「マトリックス型リーダーシップ組織構造」を採用しました。具体的には、世界を「アジアパシフィック」「ラテンアメリカ」「EMEA(欧州・中東・アフリカ)」「ノースアメリカ」、そして「特殊フォトニクスビジネス」というリージョン(※Lighteraにおける事業・組織運営上のグローバル区分)に分け、それぞれが営業とオペレーションをローカルで展開しています。

これらリージョンの軸を横断するように、財務、人事、戦略、テクノロジーなど8つの「コーポレート機能部門」を配置しました。このグローバル機能が、4つのリージョンをしっかりと繋ぎ合わせる「横糸」の役割を果たすことで、組織全体が真の意味で統合されたLighteraとして機能しています。

一方で、お客様への対応においては、地域に根ざした「深さ」も同様に重視しています。例えばNTT様は、日本国内において極めて重要なお客様であり、長年にわたり共にイノベーションを創出してきた歴史があります。こうした伝統的な信頼関係は、古河電工グループの大切な資産として今後も守り続けていきます。

同時に、データセンタ分野のようなグローバル展開されているお客様に対しては、「グローバルアカウントマネジャー」を配置し、世界中のどこに拠点を置く「ハイパースケーラー」であっても、Lighteraとして一貫したサポートができる体制を整えています。さらに、古河電工の他部門とも緊密に連携し、グループ全体の総力を結集して巨大なマーケットに対峙しています。

——異なる文化背景を持つ人々がアイデアを共有することで、どのようなアウトプットの違いが生まれるのでしょうか。

Holly: それは間違いなく、より強固で洗練されたものへと進化します。なぜなら、地域ごとに直面している課題や、培ってきた解決手法が異なるため、一つの事象を「多角的」に見ることができるからです。

例えば、ブラジル、日本、アメリカのエンジニアは、それぞれ異なる教育を受け、異なる産業文化の中で訓練されています。一つの課題に対しても、アプローチの仕方が自ずと変わってきます。これらがぶつかり合い、議論されることで、特定の地域の常識に縛られない「より深く考え抜かれた解決策」が見出されます。多様性は組織を強くする、これは私の信念です。

しかし、これを実践するのは決して容易なことではありません。時差の問題で早朝や深夜の会議は当たり前ですし、言語の壁も存在します。何より、仕事のスタイルの違いを尊重し合う忍耐が必要です。

ブラジルの同僚は非常にパッショネイトで、即座に意見を戦わせることを好みます。一方、日本の同僚は非常に思慮深く、相手の話を最後まで聴き、発言のタイミングを慎重に図る傾向があります。私たちは、これらの異なる文化の「良いところ」を融合させた、Lightera独自の「新しい仕事のやり方」を模索しています。

幸いなことに、現代はテクノロジーが私たちの味方をしてくれます。Microsoft Teamsのようなプラットフォーム、リアルタイムの同時通訳、高度な翻訳ツール。これらを駆使してコミュニケーションの物理的な障壁を取り払っています。20年前に同じことをやろうとしていたら、今の何倍も苦労したことでしょう。

通信中心からデータセンタ市場へ。会社のマインドセットをシフトした1年

——お客様の声を聴き、多様な社員の知恵を結集させて作り上げてきた製品が、まさに今の時代に完璧にフィットしているという実感をお持ちではないでしょうか。

Holly: 全くその通りです。そして興味深いことに、お客様の層そのものが劇的な変化を遂げています。

これまで、私たちの主戦場は通信業界でした。しかし、ここ数年でデータセンタ関連のお客様が急増し、彼らは従来の通信業界とは異なる期待値を私たちに寄せるようになっています。具体的には、圧倒的なキャパシティ、特殊な設計、そして驚異的な短リードタイムの要求です。これに伴い、私たちの業務プロセス自体も進化を迫られています。

特に象徴的なのが「海底ケーブル」の役割の変化です。かつて、二つの大陸を繋ぐ海底ケーブルは、通信業界のニーズに応えるためのインフラであり、通信事業者がその投資を負担してきました。しかし現在、その主役はデータセンタへと移り変わっています。世界中に点在するデータセンタを大陸間で繋ぐ必要が生じ、投資の主体もハイパースケーラーと呼ばれるような大規模事業者にシフトしています。

既存の製品をベースにしつつも、顧客基盤がこれほど速いスピードで変化している以上、私たちは常に「市場の背景で何が起きているのか」「我々は何を変えなければならないのか」を、立ち止まって深く検討し続けなければなりません。

——Hollyさんのこの1年間の「自己評価」をお聞かせいただけますか。

Holly: 最初の1年目としては、着実な成果を収められたと感じています。しかし、まだまだ改善の余地や成長の機会が残されており、そう感じられること自体が組織として健全な状態だと思っています。

成功した側面で言えば、会社のマインドセットを「通信中心」から「データセンタの成長」へと、シフトできたことが挙げられます。経営層から現場の社員までが、同じ北極星を目指して舵を切れたことは非常に大きな成果です。データセンタ市場は現在最も成長しており、古河電工としても、また投資家からも注力すべき領域であるとの強いコンセンサスがあります。その期待にビジョンで応えられている点は評価しています。

一方で、グローバルな「一つの会社」としてお客様に向き合う姿勢については、まだ「B評価」といったところでしょうか。やはり、旧来の組織やリージョンの考え方に引きずられてしまう部分が一部に残っています。

かつては、特定のリージョンで需要が溢れ、工場がキャパシティを超えて注文を断っている裏で、別のリージョンの工場では稼働率が上がっていない、という非効率なアンバランスが生じていました。しかし現在は、すべてをグローバルな視点で捉えています。データセンタ需要が爆発している北米に対し、欧州や南米、アジアから供給をサポートできる体制が整いつつあります。

「自分のリージョンの最適化」ではなく、「戦略的にLightera全体の最適化を図るために、一時的に自分たちが犠牲を払ってでも他のリージョンを助ける」。このようなマインドセットが、この1年で確実に芽生えたことは大きな進歩であり、誇りに思っています。

ローラブルリボンケーブル(超多心光ファイバケーブル)を手に説明するHolly氏

——このような巨大な組織において、人々のマインドセットを変えるために、Hollyさんはどのような手法をとられているのですか。

Holly: 結局のところ、国や立場を問わず、すべての社員は「勝てるチームで働きたい」という共通の願いを持っているはずです。

マインドセットを変えるために必要なのは、魔法のような手法ではなく、地道な説明の継続です。「なぜこれをやるのか」「なぜ変わらなければならないのか」「変わることで自分たちにどのようなメリットがあるのか」。これらを、一人ひとりの社員に丁寧に伝え続けること以外に道はありません。

社員は当然、「なぜ夜遅くに会議が必要なのか」「なぜ慣れない英語を学ばなければならないのか」という疑問を抱きます。それに対し、「これは勝つために不可欠なことなのだ」と、粘り強くビジョンを語り続けるのです。

幸いなことに、1年目は財務的にも大きな成功を収めました。この具体的な成果をしっかりとフィードバックし、「One Lighteraとなったからこそ、個々で活動していた時よりもこれだけの大きな成果が出せたのだ」という「勝ち体験」を共有することが、最も説得力のあるコミュニケーションになります。

また、私はタウンホールミーティングや社内サイトでのアップデートだけでなく、実際に各拠点へ足を運ぶことを大切にしています。今週もアジアパシフィックの4拠点を回る予定ですが、対面で直接「何がうまくいっていて、何が課題なのか」を社員からぶつけてもらう機会を設けています。デスクに座っているだけでは見えない現場の実情に触れることが、組織運営においても、お客様からの信頼構築においても不可欠です。

顧客課題への傾聴がLighteraのイノベーションをつくる

——わずか1年の間に、多種多様なお客様から支持される存在となった理由は何でしょうか。製品や技術のどのような点が高く評価されているとお考えですか。

Holly: その理由は、100年以上の歴史に裏打ちされた「信頼の蓄積」と、常に未来を見据える「革新性」の絶妙なバランスにあります。

Lighteraの前身となった各社は、銅線の時代から始まり、ファイバやケーブル、そして現代のコネクティビティ・ソリューションに至るまで、絶えずイノベーションを追求してきました。この長い歩みがあるからこそ、お客様は私たちを「経験豊かで、着実に成功を収めてきたパートナー」として信頼してくださるのです。

最近のイノベーションで言えば、ファイバ領域では従来のシングルモードやマルチモードを越え、マルチコアや空孔コア光ファイバの開発に注力しています。また、古河電工グループの総力を結集することで、熱効率の改善やプロセスの差別化といった、付加価値の高い総合的なソリューションを提供できるようになりました。

——「安全第一」と「イノベーションへの挑戦」。この2つのバランスについてはどのようにお考えですか。

Holly: どんなに優れた製品や高い利益も、社員の安全が確保されていなければ何の意味もありません。古河電工グループにとって、工場の製造現場から製品のアプリケーションに至るまで、「安全・安心」を最優先に考えることは、DNAに刻み込まれた揺るぎない方針です。

その確固たる基盤の上で、私たちはイノベーションに挑んでいます。ただし、私たちが目指すのは「イノベーションのためのイノベーション」ではありません。どれほど優れたアイデアであっても、それでお客様の課題が解決されなければ価値はないのです。私たちは、常にお客様の抱えている切実な課題に耳を傾け、それに対する「最適な解」を見出すことに情熱を注いでいます。

——お客様のニーズを具体化し、製品として実現させるために、Lighteraにはどのような「力」があるとお考えですか。

Holly: 私たちの力の出発点は、「聴く力」です。お客様がどのような用途で製品を使おうとしているのか、市場がどちらの方向へ進んでいるのか。実は、これらについては私たちよりもお客様の方が熟知されていることが少なくありません。だからこそ、強固なパートナーシップを通じた情報共有が不可欠なのです。

例えば、「ネットワークを構築したいが設置スペースが極端に狭い。この制約の中で最大限の帯域を確保してほしい」といった、非常に難易度の高いリクエストをいただくことがあります。こうした課題に対し、技術部門と対話を重ね、何度もトライアルを繰り返します。

その代表例が、私たちの「超多心光ファイバケーブル」です。当初、市場には6000心程度の製品がありましたが、お客様からは「それでは全く足りない」という声が上がりました。社内からは「そんな密度は不可能だ」という声もありましたが、私たちは「まずはやってみよう」と決断しました。

その結果、試行錯誤を経て、現在は13824心という驚異的な数を収容することに成功しました。これは世界でも数社しか作れない、まさにLighteraの技術力の結晶です。データセンタのキャパシティを急速に拡大したいというお客様の切実なニーズに対し、単なる妥協ではなく、技術的ブレークスルーで応えたのです。

私たちは安易に「できません」とは言いません。もし直接的な解決が難しくても、「このような代替案はいかがでしょうか」と提案し、常にお客様と共に前へ進む姿勢を崩しません。この「新しいことに挑戦し続ける」マインドセットこそが、私たちの強みの源泉です。

ただし、研究室で「できた」だけでは不十分です。それを高い品質で安定的に量産し、商業化できるレベルまで引き上げること。この「工業化の力」こそが、私たちが誇るプロフェッショナリズムです。

13824心ローラブルリボンケーブル

——今後の展望についてお聞かせください。

Holly: 繰り返しになりますが、最優先事項は何よりも「安全」です。「社員を誰一人として怪我をさせない」というのは、私たちの何物にも代えがたい絶対的な方針です。職場環境の安全確保を、これからも経営の最優先課題として徹底していきます。

戦略面では、リスクを適切にコントロールしながら、成長を最大化させていきます。通信業界には過去、バブルとその崩壊という浮き沈みの歴史がありました。現在の「AIブーム」についても慎重な見方がありますが、私たちは一時的な流行に左右されることなく、長期的な信頼関係を築ける「アンカーカスタマー」へのコミットメントを果たすことを主眼に置いています。

技術面では、空孔コア光ファイバなどの先端技術はもちろんですが、「実用的な使い勝手」の向上にも注力します。
その一例が、超多心光ファイバケーブル、“Rollable Ribbon(ローラブルリボン)”ケーブルに用いられている間欠接着型テープ心線の技術です。従来の平面リボンケーブルは一括接続できる利便性がありましたが、スペースを占有するという弱点がありました。私たちは、ファイバをまとめつつも柔軟に丸められる構造を開発し、大幅な省スペース化とスピーディーな敷設を可能にしました。施工業者やエンドユーザーの利便性を追求するこうした「基礎的なイノベーション」こそが、市場での支持を強固にすると考えています。

そして、私が2026年度のキックオフミーティングで社員に伝えたのは、「あらゆる業務においてイノベーションを意識してほしい」ということです。

イノベーションは研究開発部門だけの特権ではありません。事務部門でも、AIを活用して議事録作成を効率化したり、決算業務を迅速化したり、翻訳ツールを使ってグローバルコミュニケーションを円滑にしたりと、学びと改善の機会は至るところにあります。
製造、人事、経理、すべての分野でベストプラクティスを共有し、日々進化し続けること。これが、Lighteraが成長し続けるためのエンジンとなります。

——最後に、読者へのメッセージをお願いします。

Holly: 私たちがこの激動の業界で仕事をし、Lighteraという組織を率いることができているのを、大変光栄に感じています。
私たちは、古河電工が140年以上かけて培ってきた伝統を受け継ぎ、さらに発展させていくという大きな責任を背負っています。私たちが目指すのは目先の成功だけではありません。業績の向上はもちろん、地球環境への貢献、お客様との揺るぎない信頼関係の維持といった「持続可能性」を追求しています。

現在は変化が激しく、課題も多いユニークな時代ですが、この時代の第一線にいられることを誇りに思います。これまでの歩みを支えてくださったお客様、そして情熱を持って共に歩んでくれる社員たちには、心から感謝しています。私たちの社員は皆、非常に賢く、熱意にあふれています。彼らと共に、毎朝エキサイティングな気持ちで新しい挑戦に踏み出せる。この素晴らしい「冒険」を、これからも全力で続けていきたいと考えています。

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