超電導線材事業

古河電工の超電導の研究は1963年に始まり、現在はMRIをはじめとする医療機器やフュージョンエネルギー(核融合によるエネルギー)・高エネルギー物理といった先端分野に向けて、超電導線材の開発・製造を行っている。また、超電導は電気抵抗がゼロという特性により、送電ロスの大幅な削減が可能。再生可能エネルギーの活用をかなえる技術として注目されている。

超電導線材

SUPERCONDUCTING WIRES

超電導線材は、特定の低温で電気抵抗がゼロになり、電力をほとんど損失なく流せる特別な電線。古河電工の線材は、超電導層を高強度の金属で包んだ構造で、大電流を安定して流すことができ、高い信頼性を持つ。超電導線材には液体ヘリウム温度(約4K、マイナス269℃)で超電導状態になる低温型と、液体窒素温度(約77K、マイナス196℃)で超電導状態になる高温型の2種類があり、古河電工ではその両方を取り扱っている。低温型は古くからMRIなどの医療機器に使用され、高温型は近年大量生産が始まり、フュージョンエネルギーの早期実現に向けたコア部品としての応用が期待されている。

Interview

半世紀を超えて受け継がれる
唯一の技術に、私が挑む

古河電工の超電導線材の開発は、1963年に始まりました。現在では高温・低温の両方の超電導線材をグループで製造・販売している、世界で唯一の企業です。それぞれ異なる特性と強みがあり、私たちはその違いを踏まえた上で、お客様の製品や用途に応じて最適な技術の提案を行っています。私自身、学生時代から超電導の研究に取り組んできましたが、長らく超電導線材分野を牽引してきた古河電工で研究ができることに、身が引き締まる思いです。

MRIがもっと身近になる
世界のために

私の所属は生産技術課で、超電導線材の設計や製造工程の改善を担当しています。超電導線材は、医療や半導体製造など、社会に欠かせない分野で使われる重要な素材。その役割の重さを実感しながら、線材生産のコスト低減に向けた検討や試作にも取り組んでいます。コスト低減に関しては、特にMRIのような医療機器において、製造コストが下がることでより多くの人に届く可能性が広がると思っています。以前、医療機器メーカーのお客様を訪問し、私たちが作った線材を搭載したMRIを見せてもらったことがありました。それが病院の患者さんの役に立っていることを知り、非常に誇らしい気持ちになったことを覚えています。もちろん、忙しく駆け回ることもありますが、最終製品を思い描きながら、「今を乗り越えれば、誰かの役に立つ製品になる」と思えることが、私のモチベーションです。

一本の線材への試みが、
超電導の可能性を広げていく

業務の中でいちばん達成感を感じたのは、以前開発課に在籍していた頃、自己融着線という特殊な線材の開発に取り組んだことです。コイルは超電導線材を巻いて作りますが、電磁力でコイルがクエンチする(局所的な熱の発生により、超電導状態が壊れる)ことがあるため、通常は樹脂含浸(線材の外側を樹脂で固めること)を施して線材を固定して使用します。ただし、樹脂含浸には専用設備が必要で工程も大掛かりになりがち。そこで樹脂を使わず熱だけで接着して固まる自己融着線の開発に挑みました。初めてのテーマで苦労もありましたが、開発に成功し、量産化にもつながったことは嬉しかったですね。こうした挑戦と技術の積み重ねが、将来の社会を支える基盤になると信じています。フュージョンエネルギーや送電など、あらゆる領域で超電導が活躍する世界を実現できたらいいなと考えています。

新たな調達先の開拓が、
製品の信頼につながる

生産技術課にて、線材の設計や製造工程の設計に加え、超電導の原材料を提供していただける新たなパートナー企業の開拓も担当しています。超電導の原材料であるニオブやニオブ・チタンは希少金属に含まれる素材。新たな供給元となるパートナー企業を見つけることは、我々の事業の安定性を高めるだけでなく、お客様に安定して製品をお届けできる価値にもつながるはずです。そんな新しいパートナー企業から供給された原材料をもとに、超電導線材の製造工程におけるパラメータを検討し、実験計画を立て、検証を重ね、ようやく結果を出せたときには大きなやりがいを感じています。

海外での活躍のために
1年目から海外案件の最前線へ

私が古河電工を志望した理由は、高専時代からずっと続けてきた超電導の研究にあります。世界で唯一、グループで低温と高温の両方の材料を扱っている企業であり、その技術力に惹かれました。特に高温の事業所は海外にあるため、将来は海外で働きたいという思いも持っており、入社して1年目には早速、海外案件に携わる機会を得ることができました。その話をいただいたときは、非常にワクワクしましたね。海外案件での開発がうまくいき、現地に足を運んで成果を伝えられたときの充実感は忘れられません。今後は海外の事業所での勤務を目標に、さらに経験を積んでいきたいと思っています。

あの日の志を果たすために、
今日も技術を磨く

私が超電導の研究を始めたのは、誰もが電気に困らない社会に貢献したいという強い思いがきっかけでした。2011年に地元の仙台で被災し、停電によって電気のない暮らしを経験したことが、その原点です。その後、フュージョン炉(核融合炉)などにも使われる超電導が、電力供給の不安を解消できる夢の技術であると知り、研究の道に進むことを決めました。現在取り組んでいる超電導線材の製造開発は、将来的にフュージョンエネルギーのための装置やフライホイール、電力ケーブルなどへの応用が期待されています。社会全体のインフラとして実用化を進めることで、電気に困る人がいない世界を実現したいです。

Profile

佐藤 巧望
Takumi Sato
研究開発本部 超電導事業推進部
超電導製品部 生産技術課
2018年入社
超電導線材の設計や、製造工程の改善を担当。
吉田 望我
Noa Yoshida
研究開発本部 超電導事業推進部
超電導製品部 生産技術課
2023年入社
超電導線材の顧客製品、新規線材・導体開発、新規原材料の評価を担当。

これからも、世界を明るくするために

フュージョンエネルギーや
送電までも、超電導でまかなう
超電導社会を作る。

超電導線材は、MRIや半導体製造装置だけでなく、フュージョンエネルギーや送電ロスゼロの超電導ケーブルといったエネルギー分野、EVの走行充電などモビリティ分野への応用も期待されている。フュージョンエネルギーが実現し、そのエネルギー供給にも超電導が活用され、最終的には超電導を搭載した機器がそのエネルギーを使う。そんな未来を目指して、古河電工はこれからも「All to brighten the world」を体現していく

※取材内容は2025年12月時点