近年、製品の小型化・高性能化が進む中で、部材に求められる機能も高度化しています。
その中でも「軽量で耐衝撃性と透明性が高い」樹脂として広く利用されているのが PC(ポリカーボネート) です。日用品から工業製品、電子機器に至るまで幅広い分野で使用され、“割れにくい透明樹脂”として優れた実績を持つ材料といえます。しかし、電子機器の高周波化や通信技術の進歩により、従来のPCや一般的なエンジニアリングプラスチック(エンプラ)では対応しきれない課題も明確になってきました。
本記事では、まずPC素材の特徴と用途を紹介したうえで、従来エンプラが抱える課題、そしてその課題を解決する新しい発泡樹脂技術を紹介します。
PC(ポリカーボネート)とは
PC(ポリカーボネート)とは、加熱すると柔らかくなり、冷却すると硬化する熱可塑性樹脂の一種です。
数ある樹脂の中でも、高い透明性と優れた耐衝撃性を兼ね備えている点が大きな特徴で、同じ透明樹脂であるアクリルと比較しても“割れにくい素材”として知られています。
その特性から、PCは工業製品から日用品まで多岐にわたり使用され、日常生活から産業用途まで広く浸透しており、現代のものづくりに欠かせない代表的な樹脂のひとつとなっています。
PCの特徴(メリット)
ここでは、PCが幅広い分野で使用される理由となる主なメリットを解説します。
透明性が高い
PCは樹脂の中でも非常に高い透明性を持ち、光の透過性に優れています。
透明樹脂としてよく比較されるアクリル(PMMA)と同様に光学的なクリアさを持ちながら、より高い衝撃強度を備えていることが特徴です。
そのため、カバー・窓材・レンズなどの光学用途に多く使用されており、ガラスの代替材としても広く普及しています。
耐衝撃性に優れる
PCが評価される最大の理由のひとつが、非常に高い耐衝撃性です。
ガラスの約200倍、アクリルの約50倍ともいわれる強靭さを持ち、ハンマーで叩いても割れにくいことから「割れにくい透明樹脂」として高い信頼性があります。この特性により、防護カバー、産業用部品、自動車内装部品、ヘルメットシールドなど、強度が求められる用途で多く採用されています。
耐熱性が高い
PCは、一般的に100〜120℃程度の高温環境でも形状が安定している樹脂です。
熱可塑性樹脂の中では変形しにくい部類であり、熱が発生しやすい電子機器の筐体や光学部品でも使用されています。耐熱性と寸法安定性を兼ね備えることで、PCは電子機器筐体、光学部品、自動車用内装部品や測定機器の構造部材など、わずかな寸法変化が性能に影響する精密さが求められる工業用途にも適しています。
加工性に優れる
PCは、加工しやすい樹脂としても知られており、以下、多様な成形方法に対応しています。
- 射出成形
- 押出成形
- 切削加工
また、後加工の一例として、FDM造形品に対する溶剤処理も可能です。
この加工性の高さが、日用品から産業用部材まで幅広く採用される理由のひとつです。大量生産にも適しており、コストと性能のバランスが取りやすい素材といえます。
アクリル樹脂(PMMA)との比較
ここまでに書いたPCのメリットに着目した際のアクリル樹脂(PMMA)との比較を示します。PMMAは、ガラス代替材料としてPCと多くの場面で競合する材料です。
| 項目 | PC(ポリカーボネート) | アクリル(PMMA) |
|---|---|---|
| 透明性 | 高い透明性を持つ | 非常に高い透明性 |
| 耐衝撃性 | 非常に高い。アクリルの約30倍とも言われる | 中程度。衝撃で割れやすい |
| 耐熱性 | 高い。約120℃前後まで使用可能 | PCより低い。約80〜90℃程度 |
| 加工性 | 射出成形・押出成形・切削加工など幅広く対応 | 切削・研磨・接着加工が容易 |
PCの特徴(デメリット)
多くのメリットを持つ一方で、仕様環境や用途によって注意すべき点もあります。
ここでは、PCを使用する際に理解しておきたい主なデメリットを解説します。
表面硬度が低い
PCは衝撃には非常に強いものの、表面硬度はアクリルなどと比べて低めで、擦り傷がつきやすい傾向があります。スマートフォンの画面保護材にPCではなくガラスが採用されることが多いのも、この傷付きやすさが理由の一つです。そのため、カバー類や透明パーツではハードコート処理を施して表面耐久性を高める対策が一般的です。
耐薬品性が弱い
PCは有機溶剤やアルカリ性薬品に弱い性質があります。
例えば、洗剤、アルコール、アセトン、界面活性剤などが付着すると、表面の白化や微細なクラック(応力割れ)が発生する場合があります。
このため、薬品を扱う環境や、溶剤が付着する可能性がある用途では材料選定に注意が必要です。
誘電特性
一般的な用途においてPCの性能は十分ですが、通信機器などの高周波領域では課題が生じます。
PCは強靭で耐熱性もある一方、比誘電率(Dk)、誘電正接(Df)が特別低いわけではありません。
そのため、高周波信号を扱う機器では伝送損失や電波透過性に影響が出る場合があります。
近年の5G/6G通信ではより低誘電な材料が求められるため、PCを含む一般エンプラでは対応が難しいケースが増えています。
アクリル樹脂(PMMA)との比較
ここまでに書いたPCのデメリットに着目した際のアクリル樹脂(PMMA)との比較を示します。
| 項目 | PC(ポリカーボネート) | アクリル(PMMA) |
|---|---|---|
| 表面硬度 | 傷がつきやすい | 比較的傷がつきにくい |
| 耐薬品性 | 有機溶剤・洗剤・アルコール等に弱い | PCより耐薬品性が高い |
| 誘電特性 | 誘電率・誘電正接が特別低くない | PCと同様 |
PCは強度・耐熱性に優れる一方で、傷や薬品、高周波特性には注意が必要であり、透明樹脂として外観性を重視する用途ではアクリルが選ばれる場合もあります。
用途
PCは、「透明性」「耐衝撃性」「加工性」「耐熱性」など、複数の特性をバランスよく備えているため、日常生活から産業用途まで幅広い分野で採用されています。ここでは、その代表的な用途を紹介します。
一般用途
透明部品・光学用途
高い透明性と耐衝撃性により、ガラス代替として多くの製品に利用されています。
光学的クリアさと衝撃強度の両立により、安全性が求められる透明部材に最適です。
- 窓材
- レンズ
- カバー類
- 防護シールド
日用品・雑貨
丈夫な特徴から、日常的に使用するアイテムにも幅広く採用されています。
透明度が高いためデザイン性にも優れ、見た目の良さと実用性を両立できます。
- 収納ケース
- メガネレンズ
- 飲料ボトル(※グレードによる)
- 各種カバー類
家電・OA機器の外装部品
耐熱性・寸法安定性が高いため、安定した成形が求められる家電製品にも多く使われています。
成形のしやすさと強度のバランスがよく、大量生産に適した素材として広く採用されています。
- 家電の筐体
- プリンタやコピー機の部品
- スイッチパネル
高機能用途
電気・電子機器
熱に強く、寸法精度が必要な電子機器パーツに適しています。
精密さが求められる部品でも安定して使用できる一方、高周波領域では誘電特性が課題となる場合があります。
- コネクター
- 各種ハウジング(筐体)
- センサー部品
- スイッチ部品
自動車(車載用途)
軽量化と強度確保が必須の自動車分野でも採用が増えています。
金属やガラス代替による軽量化や安全性の向上に貢献します。
- 車載ディスプレイカバー
- 内装パネル
- ライトカバー
- 機構部品
一部の通信関連機器
耐熱性や機械強度の点では優秀ですが、高周波信号を扱う電子部品や通信機器では、低誘電性が求められるため適用が限定的です。
- 通信モジュール外装
- 一部の筐体部材
などで採用されるものの、比誘電率(Dk)や誘電正接(Df)が制約となることがあります。
PCの特性を引き出す「SCB®」の発泡技術
PC(ポリカーボネート)は、「透明性」「耐衝撃性」「加工性」「耐熱性」をバランスよく備えた樹脂として、幅広い製品で採用されています。一方で、高周波通信機器や先端電子機器では、PC単体では満たしきれない“軽量化”や“低誘電化”といった新たな要求が生じています。
こうした課題を解決するために古河電気工業が開発したのが、発泡技術を用いた低誘電材料「Smart Cellular Board®(SCB®)」です。
- 軽量化
- 低誘電率(Dk)
- 低誘電正接(Df)
といった、従来のPCや一般エンプラでは困難であった特性を実現しています。空気を材料内部に含ませることで比重が低下し、同時に誘電特性が向上する点が最大の特長です。
SCB®を基板材料やレドーム材料として利用することで、5G/6G時代に問題となる高周波信号の伝送損失や電波透過性の低下といった課題を効果的に解消できます。
機能樹脂製品「SCB ®」の製造販売は
古河電気工業へお任せください
ここまで、PC(ポリカーボネート)の基礎特性、用途、そして高度化する要求に対して直面する課題について解説してきました。
古河電気工業が提供するエンプラを発泡させて開発された機能樹脂「Smart Cellular Board®(SCB®)」は、上記の課題を解決するための新しい選択肢です。
「Smart Cellular Board®(SCB®)」の具体的な用途や、製品開発に関するご相談などは、以下のフォームからお問い合わせいただけます。無料サンプルのご依頼も承りますので、どうぞお気軽にお申し込みください。