私たちの身の回りでは、様々な場所で銅箔が使われています。この記事では、銅箔が使われる用途、電解銅箔と圧延銅箔の違い、低粗度銅箔とは何かについて、ご紹介します。銅箔について情報収集されているご担当者様は、ぜひ参考にお読み下さい。

銅箔の概要

はじめに、銅箔とはどのようなものかをご説明します。

銅箔とは

銅箔は、ミクロン(μm)単位の厚みの銅のシートです。薄い金属のシートを箔と呼びます。厚さとしては、200μm以下のものを指すことが多いです。銅箔、金箔、銀箔、プラチナ箔、アルミ箔、錫箔、ニッケル箔、真鍮箔(洋箔)等、様々な種類の金属が、箔として使われています。

銅は、強度、導電性、熱伝導性、耐熱性、耐食性、抗菌性、加工性等の特性に優れ、独特の色調を有する金属です。鋳物、板(プレート)、条、箔、棒、線、管、粉体等、様々な形状で使用されています。銅箔は、その特長を生かし、モバイル通信機器、パソコン、家電製品、自動車等に使用される電子部品や、建築用途等、身の回りの様々な場所で使用されています。銅箔には、大きく分けて、めっきにより析出させる電解銅箔と、圧延と熱処理により厚い銅を引き延ばす圧延銅箔の、2種類があります。

銅箔はどのようなところで使用されているか

ここでは、銅箔がどのような場所で使用されているのかを、ご説明します。

プリント基板(PCB:Printed Circuit Board)

通信機器やパソコン、家電製品、自動車等の電子機器の内部には、その制御を司る、プリント基板(PCB:Printed Circuit Board)が使用されています。

プリント基板(PCB)は、誘電体基材上に描かれた配線部と、基板上に実装され、配線部により接続された各種部品から成ります。プリント基板(PCB)の製造には、誘電体基材の表面に銅箔が貼り付けられた銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminate)を用いる方法があり、銅箔部分をマスキングとエッチングを組み合わせて加工することにより、配線部が形成されます。銅は、電気抵抗が低く、電気伝導性に優れた金属であることから、配線部に用いることで、効率の良い伝送を実現することができます。

プリント基板(PCB)には、用途や構造に応じてさまざまな種類があります。

例えば、
  • ガラスエポキシ(FR-4など)を基材とし、剛性や耐久性を持たせたリジッド基板(RPCB:Rigid Printed Circuit Board)
  • ポリイミド(PI)やPETなどのフィルムを基材とし、柔軟性を持たせたフレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)
  • リジッド基板の一部に柔軟部を設けたリジッドフレキシブル基板
などが挙げられます。

それぞれ、配線層が単層である単層基板や、それらを積層させた多層基板があります。銅張積層板(CCL)は、リジッド基板(RPCB)に用いられるものを特にリジッド銅張積層板(RCCL:Rigid Copper Clad Laminate)、フレキシブル基板(FPC)に用いられるものを特にフレキシブル銅張積層板(FCCL:Flexible Copper Clad Laminate)と呼びます。用途毎に、プリント基板(PCB)や銅張積層板(CCL)の構成は多岐に渡り、要求される銅箔の厚さや種類も、それに応じて変化します。

プリント基板(PCB)に用いられる銅箔の厚さは、1平方フィート(ft2)あたりの重量(オンス:oz)で表記され、1オンス銅箔は、厚さ35µmの銅箔を意味します。通常は、1オンス箔(35μm)、1/2オンス箔(18μm)、1/3オンス箔(12μm)等がよく使用されます。また大電流用途では、2オンス箔(70μm)、3オンス箔(105μm)、4オンス箔(140μm)や、それを超える厚い銅箔が使用されることもあります。

リチウムイオン電池負極集電体

モバイル通信機器やモバイルバッテリーのような小型電子機器や、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)等には、大容量・高出力なリチウムイオン電池が使用されます。リチウムイオン電池の負極集電体には、導電性、強度、負極として使用した際の電解液に対する耐食性が求められます。

また電極の面積を大きくすることで、電池の容量と出力を担保できますが、一方で電池のサイズを小さく抑えたいため、集電体の厚さを薄くすることが求められます。これらの背景から、負極集電体として、銅箔が用いられています。ちなみに、正極用集電体としては、正極として使用した際の電解液に対する耐食性に優れた、アルミ箔が用いられます。

シールド用途

銅箔は、導電性に優れるため、電磁波を遮断するシールド材としても利用されています。例えばケーブルにおいては、芯線の周囲に配置されることで、芯線に流れる電気を外部のノイズから保護し、内部から放出されるノイズを外部に漏らさない役割を果たします。

また近年、通信容量の増大に伴う高周波化が進み、電子機器のEMC対策が重要となっています。この対策として、軽量でシールド特性に優れる銅箔を使用したシールド部材が、使用されることがあります。

熱伝導用途

銅箔は、熱伝導性に優れるため、伝熱部材、放熱部材、熱拡散部材(ヒートスプレッダー)等にも利用されています。モバイル通信機器は、機器の小型化や内部の高集積化が進み、放熱対策が重要となっています。このような用途において、薄く、熱伝導性に優れる銅箔が、放熱部材として活用されています。

また部品の発熱量が大きい電子基板においては、放熱が問題となりますが、その対策として、基板の導体となる銅箔部分を厚くし、熱伝導による熱拡散性を高めた、厚銅基板が使用されることがあります。このような基板では、百μmオーダー以上の厚い銅箔が使用されます。

建築用途

銅は、独特な色調と良好な耐食性を生かし、建築用途において外装、内装材や装飾材としても、使用されています。また抗菌性も優れるため、病院の内装や食器、食具等にも利用されています。重量を抑えたい場所等においては、銅箔が用いられることもあります。

銅箔の種類

ここでは、銅箔の種類と、それぞれの特徴や製法について、ご説明します。

銅箔には、大きく分けて、電解銅箔と圧延銅箔の2種類があります。それぞれのメリット/デメリットを、下表にまとめました。

  電解銅箔 圧延銅箔
製法 電解めっき 鋳塊に対して圧延と熱処理を繰り返す
銅箔成分 純銅が得意 純銅、合金が得意
厚さ 薄物が得意 厚物が得意
表面性状 表/裏面で異なる表面性状 両面とも同じ表面性状

電解銅箔とは

電解めっき技術を利用して製造した銅箔を、電解銅箔と呼びます。下図は、電解銅箔の一般的な製造工程を示した模式図です。

金属製でドラム状のカソード電極(陰極)と、その周囲に配置される同心円状のアノード電極(正極)の間に、銅めっき液が充填されています。カソードドラムは所定の速度で回転しており、この状態で電解めっきを行うことで、カソードドラムの表面に、連続的に銅めっき膜を製膜することが可能です。また析出した銅めっき膜を、連続的にドラム表面から剥離させ、巻き取ることで、電解銅箔が得られます。この段階の電解銅箔を、原箔、元箔、生箔、等と呼びます。

電解めっきは、製法上、合金化の難易度が高く、それを利用した電解銅箔も、ほとんどが純銅組成となります。電解銅箔のカソードドラム側の表面は、シャイニー面(S面)と呼ばれ、カソードドラム表面を転写した、比較的平滑な表面が得られます。まためっき液側の表面は、マット面(M面)と呼ばれ、電解めっきの析出表面となります。通常は、シャイニー面(S面)に対し、マット面(M面)の方が粗い表面となりますが、用途によっては、めっき液組成やめっき条件の調整により、マット面(M面)をシャイニー面(S面)より平滑にすることもあります。

銅箔の厚さは、カソードドラムの回転速度で調整するのが一般的で、厚い銅箔になるほど回転速度を落とす(めっき析出時間を長くする)必要があり、生産性が低下することになります。逆に薄い銅箔は、カソードドラムの回転速度が速く、生産性に優れることになります。

電解めっきで得られる膜は、硬く、柔軟性に乏しいのが一般的ですが、柔軟性が必要な用途に向けた、熱処理で軟化させることを想定した電解銅箔もあります。原箔を製造後、銅箔表面には、粗化処理、耐薬品処理、耐熱処理、防錆処理といった、各種用途に合わせた表面処理が施されます。

圧延銅箔とは

銅の鋳塊(インゴット)に対し、圧延と熱処理を繰り返して製造した銅箔を、圧延銅箔と呼びます。下図は、圧延銅箔の一般的な製造工程を示した模式図です。

銅を鋳造し、鋳塊を作製した後、まず均質化熱処理を施し、熱間圧延で大きく板厚を低減します。その後、表面の酸化被膜を除去し、冷間圧延により、所望の厚さまで板厚を低減します。冷間圧延で板厚を低減する際、加工硬化による材料強度の上昇や、エッジドロップによる幅方向端部の形状の乱れ等が生じるため、必要に応じて、再結晶熱処理(焼鈍)や、端部スリットを行います。これらの工程を繰り返し、所望の板厚まで圧延し、巻き取ることで、圧延銅箔が得られます。この段階が、圧延銅箔の原箔となります。あらかじめ鋳塊を合金化することで、合金組成の銅箔を得ることもできます。

圧延銅箔は、上下の圧延ロールで裏/表面とも同様に加工が施されるため、電解銅箔のように表/裏面の差は無く、両面とも同じ表面性状となります。銅箔の厚さは、圧延加工量で調整され、薄い銅箔になるほど加工量が大きいため、生産性が低下し、また製造難易度も高くなります。逆に厚い銅箔は、圧延加工量が小さく、生産性に優れ、製造難易度も低くなります。圧延銅箔は、電解銅箔に比べて、柔軟性に優れているのが一般的です。

原箔を製造後、電解銅箔と同様に、銅箔表面に、粗化処理、耐薬品処理、耐熱処理、防錆処理といった、各種用途に合わせた表面処理が施されます。

低粗度銅箔とは

ここでは、特に高周波信号を扱うプリント基板(PCB)に使用される、低粗度銅箔について、ご説明します。

近年の通信容量の増大に伴い、通信周波数の高周波化が進んでいます。このような環境下で使用されるプリント基板(PCB)には、伝送損失を低減するため、表面粗度の小さい銅箔(低粗度銅箔)が使用されます。プリント基板(PCB)に交流電気信号を流す際、電気エネルギーの一部は熱エネルギー等に変換され、伝送損失と呼ばれる信号の減衰が生じます。伝送損失は、主に以下の3つの要素で構成されます。

  • 誘電損失: 基材(誘電体)に起因する損失
  • 導体損失: 回路導体の抵抗や表皮効果に起因する損失
  • 散乱損失: 回路導体の表面や誘電体との界面での信号散乱による損失

導体損失と散乱損失をまとめて、導体損失と呼ぶこともあります。プリント基板(PCB)に流れる電気信号の周波数が高くなると、それぞれの成分が増大し、結果、伝送損失も増大します。伝送損失の増大を抑制する手段として、誘電損失の観点からは、誘電体基材の比誘電率(εr、Dk)と誘電正接(tanδ、Df)を、低減することが有効です。

また導体損失の観点からは、回路導体の電気抵抗率を小さくし、線路幅を広くすることが有効です。更に散乱損失の観点からは、回路導体の表面粗度を小さくすることが有効です。プリント基板(PCB)用銅箔の表面には、誘電体基材との密着性を高めるための粗化処理が施されますが、高周波化に伴い、表皮効果の影響で、電気信号が銅箔の表層付近のみを流れることになり、銅箔の表面粗度の影響が大きく表れるようになります。

この背景から、高周波信号を扱うプリント基板(PCB)には、表面粗度の小さい低粗度銅箔が求められます。銅箔は表面粗度に応じて、一般箔(STD箔)、MP箔(Middle Profile)、LP箔(Low Profile)、VLP箔(Very Low Profile)、H-VLP箔(Hyper Very Low Profile)等、様々なグレードがあり、表面性状や製法は、製造メーカ各社で異なります。伝送特性の観点からは、表面粗度の小さい銅箔を使用することが好ましいですが、このような銅箔は、誘電体基材との密着性を担保することが難しくなります。このため、伝送特性と密着性を兼ね備えた基板材料の開発が、各社で進められています。

古河電気工業が開発する発泡樹脂「SCB®」

SCB®(Smart Cellular Board®)とは

SCB®(Smart Cellular Board®)は、古河電気工業が独自に開発したSCB発泡技術を用いて製造した、発泡樹脂材料です。SCB発泡技術を用いることで、従来発泡させることが困難であった、「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」や「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」と呼ばれる高い強度や耐熱性を持つ樹脂の発泡が可能となります。

SCB®(Smart Cellular Board®)は、発泡により、母相となる樹脂に空気を取り込むことで、材料全体の比誘電率(εr、Dk)、誘電正接(tanδ、Df)を低減した低誘電材料です。特に、比誘電率(εr、Dk)については、従来のソリッドな樹脂材料では実現困難な、2未満を実現します。(下図)

比誘電率(εr、Dk)、誘電正接(tanδ、Df)が低いため、伝送特性に優れたプリント基板(PCB)、電波透過性に優れたレドーム、絶縁性に優れた絶縁材料、等への適用が期待できます。プリント基板(PCB)においては、誘電正接(tanδ、Df)だけでなく、比誘電率(εr、Dk)も低いため、2つのパラメータそれぞれの効果により、誘電損失を低減可能です。

また比誘電率(εr、Dk)が2未満と低いため、伝送線路の特性インピーダンス(注)の整合を考慮した際に、従来のソリッドな樹脂材料に比べ、線路幅を広くすることができます。この効果により、誘電損失だけでなく、導体損失の観点からも、伝送損失の低減が期待できます。更に、誘電体基材をSCB®(Smart Cellular Board®)とし、回路導体を散乱損失の小さい低粗度銅箔とすることで、更なる伝送特性の向上が期待できます。

当社では銅箔事業部門が独自の表面処理技術により、表面の凹凸を極限まで抑え、高周波域の伝送損失を低減した電解銅箔を製造販売しております。 ( 銅箔製品リンク|古河電気工業株式会社別ウィンドウで開きます

  • (注)
    特性インピーダンス:電気信号が伝送線路を流れる際の、電圧と電流の比です。電気信号の発信側と受信側を伝送線路がつなぐ場合、それぞれの特性インピーダンスが一致(整合)していないと、その境界で電気信号の一部が反射し、信号の損失や、反射した電気信号との干渉による信号の劣化が生じます。特性インピーダンスは、誘電体基材の比誘電率(εr、Dk)と厚さ、回路導体の厚さと幅によって決まり、特性インピーダンスを維持しながら誘電体基材の比誘電率(εr、Dk)を低くすると、回路導体の幅を広くすることができます。

機能樹脂製品「SCB ®」の製造販売は
古河電気工業へお任せください

Smart Cellular Board®(SCB®)」の具体的な用途や、製品開発に関するご相談などは、以下のフォームからお問い合わせいただけます。無料サンプルのご依頼も承りますので、どうぞお気軽にお申し込みください。

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