多層基板は、電子機器の小型化・高機能化を支え、配線密度と性能を両立する重要技術です。本稿では、その構造、製法、層間接続技術、メリット・デメリットを体系的に解説します。

多層基板の概要

ここでは、多層基板の基本構造と、なぜ高機能電子機器で多用されるのかを解説します。

多層基板とは

多層基板とは、複数の配線層を絶縁材料とともに重ね合わせて構成されたプリント基板です。回路基板は層数によって分類され、一般的なものとして片面にのみ配線を持つ片面基板や、表裏に配線を持つ両面基板があります。

多層基板はこれらと違い、内層にも配線を持つタイプです。 複雑な回路設計や高密度な配線が可能になるので、限られた面積に多くの電子部品を配置できます。限られた基板面積で多くの信号や電源を扱えることから、小型化や高機能化が求められる電子機器において不可欠な技術となっています。代表的な構造として、スルーホールで全層を接続する貫通多層基板があり、信頼性が高く産業機器などに用いられます。

さらに、高密度化に対応するため、途中層間のみを接続するIVH基板や、微細ビアを積層形成するビルドアップ基板が用いられます。

これらの技術は実装密度向上と小型化に貢献しています。

多層基板の製法

本項では、多層基板がどのような工程で作られるのか、その基本的な製法を説明します。

多層基板のパターン形成から積層・検査までの流れ

多層基板は、一般的に両面基板を絶縁材料とともに積層して構成されるプリント基板で、高密度配線や高機能化を可能にします。その基板製造はまず、両面基板に配線パターンを形成する工程から始まります。銅張積層板にフォトリソグラフィとエッチングを施し、導電性の高い銅箔つまり導体層に配線が形成されます。

用途に応じた層数(4層、6層など)に多層化するには、両面基板とプリプレグ(半硬化樹脂)を重ね、加熱・加圧して積層成形を行います。層間を電気的に接続するためのスルーホールはドリルによる加工と、銅めっきによって導通が確保されます。

最後に、外層配線の形成、表面処理、外観・電気検査を経て完成します。層数が増えるほど位置合わせ精度や信頼性管理が重要となり、高度な製造技術が求められます。

多層基板における層間接続

ここでは、多層基板の性能を支える層間接続技術について解説します。

貫通・IVH・ビルドアップ基板の違い

代表的な多層基板構造が貫通多層基板です。これは、基板の全層を貫通するスルーホールによって、すべてを電気的につなぐ方式です。特徴としてドリル加工で貫通孔を形成し銅めっきで導通するため、構造が比較的シンプルで、長い製造実績があり信頼性が高いことがあげられます。一方で、全層を貫通するため、配線の自由度を制限し、微細化や高密度化には不利という課題があります。

高密度化の要求に応える形で登場したのがIVH基板です。IVHは任意の層間を接続する非貫通ビアで、表層から内層、内層同士など、必要な層間のみを接続できます。不要な層を貫通しないためスペースを有効活用でき、配線の自由度が向上します。貫通多層基板と比較すると設計・製造はやや複雑になりますが、通信機器や高機能機器で多く採用されています。

微細化を追求した構造がビルドアップ基板です。一般的にコアとなる両面基板に絶縁層と配線層を順次積み重ねて作成します。レーザー加工で形成した微細ビア技術とアディティブ製法によって超高密度配線が可能です。半導体パッケージ基板など、限られたスペースに多くの部品と配線を収めることで、実装密度向上と小型・薄型化に大きく貢献しています。

多層基板のメリット/デメリット

最後に、多層基板を採用する際の利点と注意点について整理します。

多層基板のメリット

多層基板は、複数の配線層を絶縁材料とともに積層することで、限られた基板面積に多くの配線を収められる点が大きなメリットです。これにより配線密度が向上し、電子機器の小型化や高機能化を実現できます。また、信号層、電源層、グラウンド層をそれぞれ独立して配置できるため、ノイズ低減やインピーダンス制御がしやすく、高速・高周波信号においても安定した特性が得られます。さらに、部品実装の自由度が高まり、回路設計の柔軟性が向上する点も利点です。

多層基板のデメリット

一方で、層数の増加に伴い製造工程が複雑化し、材料や加工コストが高くなる傾向があります。設計時には層構成や配線ルールへの配慮が必要となり、不良発生時の解析や修理も難しくなります。そのため、多層基板は高性能を求める用途に適している一方、要求仕様やコストとのバランスを考慮した選定が重要になります。

古河電気工業が開発する発泡樹脂「SCB®」

最後に、次世代プリント基板を支える古河電工の材料技術について紹介します。

SCB®(Smart Cellular Board®)とは

SCB®(Smart Cellular Board®)は、古河電気工業が独自に開発したSCB発泡技術を用いて製造した、発泡樹脂材料です。SCB発泡技術を用いることで、従来発泡させることが困難であった、「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」や「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」と呼ばれる高い強度や耐熱性を持つ樹脂の発泡が可能となります。

SCB®(Smart Cellular Board®)は、発泡により、母相となる樹脂に空気を取り込むことで、材料全体の比誘電率(εr、Dk)、誘電正接(tanδ、Df)を低減した低誘電材料です。特に、比誘電率(εr、Dk)については、従来のソリッドな樹脂材料では実現困難な、2未満を実現します。(下図)

比誘電率(εr、Dk)、誘電正接(tanδ、Df)が低いため、伝送特性に優れたプリント基板(PCB)への適用が期待できます。プリント基板(PCB)においては、誘電正接(tanδ、Df)だけでなく、比誘電率(εr、Dk)も低いため、2つのパラメータそれぞれの効果により、誘電損失を低減可能です。

また比誘電率(εr、Dk)が2未満と低いため、伝送線路の特性インピーダンス(注)の整合を考慮した際に、従来のソリッドな樹脂材料に比べ、線路幅を広くすることができます。この効果により、誘電損失だけでなく、導体損失の観点からも、伝送損失の低減が期待できます。
同時に軽量化にも寄与し、機器設計の自由度を高めます。エンプラを微細発泡化する独自技術により、性能と加工性を両立し、古河電工の技術がお客様の成功を支えます。

  • (注)
    特性インピーダンス:電気信号が伝送線路を流れる際の、電圧と電流の比です。電気信号の発信側と受信側を伝送線路がつなぐ場合、それぞれの特性インピーダンスが一致(整合)していないと、その境界で電気信号の一部が反射し、信号の損失や、反射した電気信号との干渉による信号の劣化が生じます。特性インピーダンスは、誘電体基材の比誘電率(εr、Dk)と厚さ、回路導体の厚さと幅によって決まり、特性インピーダンスを維持しながら誘電体基材の比誘電率(εr、Dk)を低くすると、回路導体の幅を広くすることができます。

機能樹脂製品「SCB ®」の製造販売は
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